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ホッと一息photograph[徳島県保険医新聞2023年3月号掲載]

『仁淀ブルーもどき』

昨秋、県職員のリフレッシュ休暇を利用して、念願だった”タイムトラベル”に行ってきました。幼少期の思い出の地を巡る旅です。一昨年他界した父の人生をたどる旅でもあります。祖父が結核で早くにリタイアしたため、父は若いときから家族5人を養わねばならず、大学での無給医局員生活とは無縁で、保健所長として農山村の結核検診を熱心にやっていたようです。検診の疫学研究で学位をいただきつつ、30代の8年程を高知県の保健所や診療所で勤めていました。父とは30歳違っていましたので、生まれたときは山川町におり、9歳で徳島市に帰ってくるまで父の勤め先であった土佐清水市、本山町、吾川村(今は仁淀川町)名野川と転々としました。(私も30代は 病理、眼科、ゲノム研などを転々としましたので、図らずも血は争えないです。)

50年以上経ってどうなったか。土佐清水市の家(官舎)は公園になり、本山町では家の大体の場所がわかる程度で、近くで保健所跡地の表示を見つけました。自宅の母の記憶をたどり、スマホで写真を送りながら探しました。便利な時代です。名野川では驚いたことに木造2階建ての家はそのままあり、古びて荒れていましたが1月前まで住んでいる人がいたと聞いて二度びっくり。診療所はなくなっていました。小学校は立派な建物でしたが2012年に閉校。通りは寂れ、商店は残っていませんでした。

名野川は仁淀ブルーで有名な中津渓谷の入り口にあり、小学校の運動場が駐車場でした。仁淀ブルーには午前の光が良いそうですが、写真は午後になってしまい”もどき”です。

今でも山の上の方まで人家があり、往診に登っていく遠くの父の小さな姿を思い出しました。

徳島県立中央病院 工藤英治