歌舞伎座の緞帳 横山大観「霊峰飛鶴」(撮影:筆者)
ねぐらから飛び立つタンチョウ(北海道鶴居村)(撮影:筆者)
『私の疑問』
写真を始める前までは何気なく通り過ぎてきたことにじっくり向き合うことがあり、面白い人生を送っています。
2023年3月歌舞伎座でのことです。日本画の巨匠・横山大観先生の新緞帳「霊峰飛鶴」が披露されました。
本物の「霊峰飛鶴」は、雪をかぶった富士山を背景に、二十数羽のツルが悠々と飛んでいる小品です。私は細かくも観ずに、ツルたちは永遠に富士山の前を飛び続けるとイメージしていました。しかし、緞帳で、拡大された一羽一羽のツルの姿態を観ると…脚を後方にピンと伸ばしているのもいれば、中には頭部は上方を向いているのに脚はもうそろそろ着陸するぞというように下ろしているのもいます。
実際に北海道でツルの撮影をすると、空高く飛ぶツルたちは頭から脚先まで一直線です。つまり、大観先生の緞帳で、上空にもかかわらず着陸体勢に入っているツルがいるのが不思議でなりません。どこに降りようとしているのでしょうか?これが私の疑問です。
善成病院 善成 敏子